中望遠レンズがポートレート撮影に最適な理由

ポートレート撮影においては、一般に「中望遠レンズ」が推奨されます。85mmなどの焦点距離を持つこのレンズは、しばしば「ポートレートレンズ」とも呼ばれ、被写体の魅力を引き立てるのに適しています。

ポートレートの目的は、人物の美しさや魅力を最大限に引き出し、美しい写真に仕上げることにあります。この目的を達成する上で、主焦点となる人物に焦点を合わせやすい中望遠レンズの使用は非常に有効です。

ポートレートでのレンズ選択は、撮影者が描写する人物像をどうコントロールするかが鍵となります。この記事では、ポートレートにおける最適なレンズの選択とその使用方法について詳しく解説します。

レンズを選ぶ際の重要な考慮事項の一つは、歪みの少なさです。人物の顔や体を自然に描写できれば、より魅力的な写真が撮れるためです。

現実を写真で完全に再現することは不可能です。レンズは現実の模倣に過ぎず、光を集めてセンサーに投影する過程で必ず歪みやシフトが生じます。しかし、このような歪みも、写真としての魅力を形成する一因となります。特にポートレート撮影では、本来の姿を忠実に表現できる歪みの少ないレンズの選択が重要です。

被写体の本質を尊重し、照明やアングル、ポーズを工夫することで、その魅力を最大限に引き出すことがポートレート撮影の基本です。レンズの描写力を生かした撮影技術は、基本技術をマスターした上でさらに追求するべきです。

通常、歪みが少ないレンズは中望遠以上のものとされています。

広角レンズの歪みがよく知られている現象ですが、標準レンズにおいても似たような効果が観察されることがあります。特に顔のクローズアップを撮影する際、カメラが被写体に近づくと歪みが生じやすくなります。この現象は「接近すると歪む」とよく表現されます。

この歪みは、遠近感の違いによって生じます。具体的には、近くにあるオブジェクトが相対的に大きく見え、遠くにあるオブジェクトが小さく見えるという現象です。これが実際の大きさと異なると、歪みとして感じられるのです。

例えば、広角レンズでは近いものが実際よりも大きく、遠いものをより小さく映し出す傾向があります。この特性が歪みを引き起こす原因となります。かつて流行した「鼻デカ犬の写真」はこの現象を利用した例です。撮影距離が近いほど、この歪みは顕著になるため、撮影する際には距離感に注意することが大切です。

たとえば、非常に近い距離で撮影するとき、レンズから鼻までの距離が5cm、耳までが10cmだとすると、この距離差が2倍になります。つまり、鼻と耳の間の距離感が実際の2倍と感じられるわけです。

一方、撮影距離が10メートルの場合、レンズから鼻までの距離は10メートル5センチ、耳までは10メートル10センチとなりますが、その差はほとんど感じられません。これは誤差の範囲内です。

したがって、撮影対象が十分に遠い場合は、鼻と耳の間に距離感の違いが生じず、歪みも発生しません。

ポートレート撮影で、人物の顔を画面上で同じ大きさに撮る際、広角レンズを使用すると近づく必要がありますが、望遠レンズを使用する場合は距離を取る必要があります。

広角レンズは視野が広いため、広い範囲を撮影しようとすると近づかざるを得ません。このように近づくと、歪みが生じることがあります。そのため、広角レンズは歪みやすいと言えます。

しかし、望遠レンズのように十分な距離を保てば、広角レンズでも歪みは生じません。ただし、望遠レンズと同じ位置から撮影すると、被写体が非常に小さく映ります。

広角レンズを使用すると、画面の端が引っ張られるような歪みが生じますが、これはレンズの収差によるもので、遠近感による歪みとは異なる現象です。

ここでは、ポートレート撮影におけるレンズの選び方に焦点を当てます。特に中望遠レンズは、顔のアップ撮影時にも自然なラインを保ち、歪みが少ないため、ポートレートに最適とされています。

望遠レンズを使用すると画角が狭くなり、撮影者は被写体から一定の距離を保つ必要があります。これにより、被写体の前後の距離感が圧縮され、いわゆる「圧縮効果」が生まれます。この効果は背景との距離が実際よりも近く感じさせ、遠近感の差を縮小します。

一方、広角レンズを使用すると、遠近感が強調されすぎ、現実よりも歪んで見えることがあります。そのため、適度な焦点距離を持つ中望遠レンズがポートレートには最適で、顔の形が自然で平坦すぎず、適切な立体感を保つことができます。

中望遠レンズの焦点距離は、約70mmから135mmの範囲です。この範囲内で、被写体の立体感を好みに応じて調整することができます。また、適切な撮影距離と背景のぼけ具合もポートレートに適しています。これにより、様々なレンズの中から自信を持って選ぶことができます。

この基本的な理解を持つことで、レンズ選択時に自信をもって選択できるでしょう。ポートレートにおいて、中望遠レンズはバランスの取れた最も適した選択肢と言えます。

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